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「スマホに釘付けだった日々」
チェック

■スマホに釘付けの日々

 生きづらさにぴたっとはまった

 

 

―坂本さんは昔、ゲームやギャンブルにのめり込んでいたそうですが。

 

スマートフォンを片時も離せず、ゲームで課金を繰り返し、借金をしてもギャンブルがやめられない生活を送っていました。当時の僕はスマホとギャンブル以外、何も興味がありませんでした。

 

―いつ頃からのめり込むように?

 

1人暮らしで看護専門学校に通っていた20歳の頃です。スマホのゲームの課金、いわゆる「ガチャ」にはまりました。最初は数百円だったのが、クレジットカードを持つようになると数万円に増え、多い時には1カ月で数十万円も使うように。そのうち借金もするようになりました。

 

―課金で借金とは、かなりのめり込んでいたんですね。不安になりませんでした?

 

「俺、大丈夫かな?」という思いはありましたね。ゲームがやめられなくて友達との約束を急にキャンセルしたり、授業中にゲームをしたりしていましたから。そう思いながらも、一発当てて借金を消そうと、ギャンブルにも手を出すようになりました。はまったのはオンライン競艇。ネットで全国各地のレースが見られて、舟券も買える。もう1日中スマホに釘付けでした。当然、借金も膨らみました。

 

―そんなにギャンブルをして生活はできていたんですか?

 

学校を卒業して病院に就職し、手術室担当の看護師として働いていました。仕事はできていたのですが、借金が返せなくて、実家や職場からお金を盗むようになりました。いつ警察沙汰になるのか恐怖と隣り合わせの毎日でしたが、それでもギャンブルがやめられなくて。料金を滞納してライフラインもスマホも止められました。そんな状態でも、そのスマホを手に毎晩Wi-Fiがつながるコンビニエンスストアをさまよい、明け方までひたすら動画を見続けていました。そうしていると、問題だらけの現実を忘れられたんです。

 

―楽しいからネット・ゲームやギャンブルにのめり込むイメージがあったのですが、そうではないようですね。

 

自分の生きづらさにゲームやギャンブルがぴたっとはまった、という感じです。最初にゲームにのめり込んだのは、忙しい実習と人間関係の悩みでストレスが大きくなっていた時期。高校まで打ち込んでいた野球に代わるものが見つからず、一人暮らしの寂しさもありました。ギャンブルに拍車がかかったのは、生死と向き合い緊張状態の続く仕事に心も体も疲れていた時期です。借金の悩みも頭から離れませんでした。

 

―誰かに相談はしなかったんですか?

 

子どもの頃から本音を話すことが苦手で、人に弱みを見せられない性格。ゲームやギャンブルで借金があるなんて、とても相談できませんでした。最終的には、「自分なんて死んだ方がましだ」「どうやったら周りに迷惑を掛けずに死ねるだろう」と、死ぬことばかり考えていました。勤務先の手術室にある薬剤を見ては「これを打てば死ねるな」と。でも死にきれなくて、最終的に母親に助けを求め、グレイス・ロードに入寮しました。

 

―今の坂本さんからはとても想像できないのですが。

 

グレイス・ロードで同じ依存症の問題を抱えた「仲間」と出会い、回復プログラムに取り組んだことで、自分が抱えている生きづらさの問題に気づきました。仲間と語り合い、分かち合いながら、ゲームやギャンブルに頼らずに生きづらさを解消する生き方を身に付けることができて、僕は救われました。あの時、死ななくて本当によかったと思っています。

一般社団法人グレイス・ロード
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