Interview list
■新しい生き方を楽しむ
モノクロから彩りあふれる世界に
―坂本さんはギャンブルをやめて6年目になるそうですね。やめ続けるために何か気をつけていることは。
「正直さ」「心を開く」「やる気」。これは依存症からの回復に大切な要素で、この3つを心がけています。日々の生活の中では、この通りにいかないことももちろんありますが、そういう状態を放置しないで、自分の中に少しでもひずみや違和感が生じたら、ミーティングでそのことを話すようにしています。小さなことも積み重なれば大きな問題につながってしまいますよね。不正直だった過去とはまったく違う新しい生き方を楽しんでいます。
―施設以外でもミーティングをする場があるのですか?
自助グループのミーティングがあります。ギャンブルなら「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)」、ゲームなら「OLGA(オンライン・ゲーマーズ・アノニマス)」という自助グループがあって、匿名で自由に参加できます。OLGAは全国的にまだ少ないのですが、GAのミーティングは全国各地で毎晩開かれています。僕もGAとOLGAのミーティングに参加していますが、完治しない依存症は再発することもある病気なので、自助グループに通い続けることが大切です。
―ギャンブルやゲームの問題が出ていなくても通い続けるとは大変ですね。
自助グループに参加しなくなると、またギャンブルに依存するようになる。こういうケースがとても多いんです。今の僕と再発した人の違いは何かと言えば、「自助グループにつながり続けているかいないか」。孤独や不正直は再発のリスクが高くなるので、自助グループはなくてはならない存在です。グレイス・ロードでは回復プログラムの一環として、入寮中は自助グループに毎晩参加するのですが、これは、施設から自立した後も通い続ける習慣をつけるためです。
―坂本さんは今、仕事でもスマートフォンを使うことが多いと思いますが、ネット・ゲームの問題は出ていませんか?
入寮中のスマホやパソコンを使えない期間が終わり久しぶりにスマホを持った時は、暇さえあればスマホに触り、ゲームにはまりそうになりました。そのことを仲間に打ち明け、ゲームアプリを消す提案などをしてもらい、それ以来、スマホと適度な距離を保つことができています。自分のネット・ゲームの問題をあらためて認識した出来事でしたが、その問題を正直に話すことで解決できるということも確認できました。この経験も、ネット・ゲーム依存症の相談支援に役立っています。
―安心しました。回復してからの生活をどう感じているか教えてください。
年々、生きることが楽しくなっています。昔はスマホとギャンブル以外、何も興味がなくて、借金や窃盗をするようになってからは、そのことが頭から離れませんでした。今は、ご飯を食べたり、人と話したり、仲間と遊んだり、給料を計画的に使って貯金もしたり。そういう当たり前の生活がすごく楽しくて、自分の心が豊かになったと実感しています。ゲームやギャンブルに依存していた頃はモノクロの世界にいるようでしたが、今は彩りにあふれた世界を生きていて、その彩りはどんどん豊かになっていると感じています。
(注)ミーティング
自分の過去や問題を正直に話し、他者の話に耳を傾けるグループセラピー。自分の問題の本質に気づき、他者への共感を深める効果があるとされ、依存症治療として世界的に用いられている